友情航海

〜追いつけないメリーゴーランドあるいは雨降りのローラーコースター〜

武蔵野線は田町を越えて

 

私が8歳の時の話です、当時私たちが住んでいた家は床が屋根でしたから,雨露をしのぐにあたり身体を小さくかがめる必要がありました、そうするとその時の私たちと姿形が似ていたからでしょうか,下のショがよく現れました、

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下のショは一見するとしゃがんだ人間の姿をしています、しかし彼らは本当はしゃがんでなどおらず,極端に小さい胴体に人間大の脚がにょっきりと生えているのでそのように見えるのです(ちょうどザトウムシに近いかもしれません)、彼らは耳かきみたいな音をさせながら,蜘蛛のようにガサゴソとそこら中を動き回っていました、

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いいえ,怖くはありませんでした、確かに畸形な生きものだとは思いましたが,アマゾンの熱帯雨林の奥地,光の届かぬ深い海,うち捨てられた廃墟の庭などにはより異形のものが潜んでいることを私は知っていましたし,また私たちの家の近くにはあの大学がありましたから,そのような生きものが発生することは別段に不思議なことではありませんでした、

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そして何より,彼らは不細工な躯体をずりずりと這いずりまわらせるだけで,私たちに害を及ぼすようなことは一度たりともしませんでした、本当に,彼らはパンの一切れも食い荒らすことなく,ただそれが悲しき義務であるかのごとくに這いまわるものですから,かえって憐れみを覚えてしまったものです、

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ただ,ひとつ気がかりだったのは,彼らは幾度となく私たちの前に姿を現していたにもかかわらず,一度としてその「顔」を見せたことがなかった,ということです、あの小さな胴体に,はたして顔はあったのでしょうか、顔のない生物なんてどうしたって存在し得るはずがありません、私は後年,B省の大動物園で古今東西全ての生物を見ることになるのですが,そこでも顔のない生物はただの一種もありませんでした、

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もしかすると,あれは胴体から脚が生えていたのではなく,胴体などはじめから存在せず、ただ原因を欠いた結果だけの存在として「脚そのもの」だけが突然変異的に出現していたのかもしれません、そう考えると,私たちが彼らの顔を見なかったことや彼らが家の食糧を荒らさなかったことなど,全てにおいて辻褄が合います、でもだとしたらそれはあまりに恐ろしいことです、

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私はじとじとと小雨の降りしきる夜などにそのことについて思いを巡らせては,発狂せんばかりの恐怖と不安に襲われ,あの影のようなザトウムシがそこらじゅうに蠢いている気配すら感じられて一人肝を冷やすのでした、 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、 ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、ああ、