蟹に心があったとて
誰にそいつが分ろうか。
牛に希望(のぞみ)があったとて
そいつを誰が叶えよう。
象がことばを喋れたら
愚痴の一つも言えたのか。
鶏(とり)が地べたを駆けたとて
何から逃れられようか。
水も魚もありゃしない。
土に咳き込むわが娘。
虹を目指して得たものは
線香花火の夢の仇。
禿げた頭を震わせて
鶏(とり)を屠ったわが娘。
学ぶに学ぶこともなし。
小屋に真冬の陽が落ちる。
妻に言われた買い物も
ろくに出来ないうつけ者。
たとえ嵐が吹いたとて
お前に何が失える?
暗い布団の片隅で
暗い風呂場の物陰で
女の声が聞こえたら。
女の影が見えたなら。
火をつけ、正気を保つのだ。
蟹に心があったとて
誰にそいつが分ろうか。
俺に明日があったとて
誰がそいつを掬おうか?
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今年はこういう詩をたくさん書いて芥川賞を獲りたいと思います。よろしくお願いします。