蟹の心

蟹に心があったとて

誰にそいつが分ろうか。

 

牛に希望(のぞみ)があったとて

そいつを誰が叶えよう。

 

象がことばを喋れたら

愚痴の一つも言えたのか。

 

鶏(とり)が地べたを駆けたとて

何から逃れられようか。

 

水も魚もありゃしない。

土に咳き込むわが娘。

 

虹を目指して得たものは

線香花火の夢の仇。

 

禿げた頭を震わせて

鶏(とり)を屠ったわが娘。

 

学ぶに学ぶこともなし。

小屋に真冬の陽が落ちる。

 

妻に言われた買い物も

ろくに出来ないうつけ者。

 

たとえ嵐が吹いたとて

お前に何が失える?

 

暗い布団の片隅で

暗い風呂場の物陰で

女の声が聞こえたら。

女の影が見えたなら。

 

火をつけ、正気を保つのだ。

 

蟹に心があったとて

誰にそいつが分ろうか。

 

俺に明日があったとて

誰がそいつを掬おうか?

 

_______________________________________

 

今年はこういう詩をたくさん書いて芥川賞を獲りたいと思います。よろしくお願いします。