友情航海

〜追いつけないメリーゴーランドあるいは雨降りのローラーコースター〜

町のはずれに空き家があり、その隣に空き地が広がっている。空き地には空き缶や空き瓶が散乱している。そこから少し行くと市街地に出る。もぬけの殻となった空き物件や、空き部屋の多い集合住宅、空きテナントの多いビルばかりが目立つ市街地だ。飲食店やスーパーマーケットはあるが、人々は常に腹を空かせている。

 

この町では太陽の光が雲を破って差し込むことはない。一年を通して空は曇り、体にまとわりつくような湿気が町中に立ち込めている。にもかかわらず、人々は毎日外に洗濯物を干す。晴れることはないが、雨が降ることもないと知っているからだ。彼らの着るものはいつも少しだけ湿っていて、まるで幽霊みたいである。

 

この町の人々の血液型は、必ずA型かO型である。B型やAB型はいない。また、早生まれの人の数が極端に少ない。全くいないということはないが、やはり極端に少ないのだ。全員、足の人差し指が中指よりも長い。歩きながら話すことができない。幼い子供であっても野菜を嫌う者は一人もいない。修学旅行でどこに行ったのか、何をしたのか、現役の学生たちですら覚えていない。その他、いくつかの事柄において彼らには奇妙な共通点があるが、そのことに気付いている者はやはり一人もいない。

 

話を最初の空き家に戻す。この空き家には家具調度の類は何もないが、ただ一つ、一階から二階へ続く階段の踊り場に小さな箱が置かれている。しかしこの箱は空き箱ではない。中には恐竜のフィギュアが238個入っている。そのうちのいくつかには後頭部にボタンが付いていて、押すと「おいしくなってくれてありがとう」という音声が流れる。でもこの町の人々はこのことを知らない。このことを知っているのは私だけだ。